(ネタバレの部分がありますので、未鑑賞の方は充分ご注意ください。)
「ノスフェラトゥ」、聞き慣れない言葉だと思いますが、ルーマニア語で「吸血鬼」の意味だそうです。監督ロバート・エガースが昔見た「吸血鬼 ノスフェラトゥ」というサイレント映画をかなり気に入っており、監督自身で脚本も担当して作り上げた作品です。出演はヒロインのエレンにジョニー・デップの娘のリリー=ローズ・デップで、彼女がどんな演技をするのか注目しつつ鑑賞しました。
舞台は1837年のドイツ、ヴィスブルクという町で、エレンは不動産会社に勤める夫トーマスと仲睦まじく暮らしていましたが、昔謎めいた夢を何度も見ており、夢の中で最高の幸福感を味わいます。それが何なのか分からないまま過ごしていましたが、ある日夫トーマスが街の郊外にある古い屋敷を買取りたいと希望しているオルロック伯爵のもとを訪ねるよう指示を受けます。伯爵が住むのはルーマニアにあるトランシルバニア地方のかなり古い城塞で、夜間しか行動しない不気味な伯爵と屋敷の売買契約を結ぶのですが実はそれが恐ろしい企みの始まりに過ぎなかった… といった感じのストーリーです。
全体として、薄暗い画面に一方向からの照明しかないという陰鬱な雰囲気が支配しており、オルロックの姿は暗闇に紛れていたりアップでしか写さなかったりしてより不気味さを強調しているところなど吸血鬼映画としてよく出来ていたと思います。オルロックを退治するためにオカルト研究の専門家を呼び対策を講じていくのですが、まさに「悪魔祓い」の要素も入り込み、テイストとしては「エクソシスト」を彷彿とさせるものがありました。
また、夫との愛に満たされながらもオルロックとの関係に最高の幸福感を味わうエレンという難しいキャラクターを演じたリリー=ローズ・デップの美しくも哀しい姿は胸を打つものがあったと思います。あまりお父さんとは似ていない気がしましたが、彼女の出演作には注目していきたいです。
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