(ネタバレの部分がありますので、未鑑賞の方は充分ご注意ください)
ムショ帰りの主人公が「差入屋」となってさまざまな事件に遭遇し、苦悩しながら親子のあり方を模索していく作品で、主人公の真司を演じた丸山隆平さんがどんな演技をするか、注目しつつ鑑賞しました。
登場する人物達の親子関係はどれもかなりクセの強いものばかりで、真司の母親は老齢であるにも関わらず息子に金銭をたかり若い男に貢ぎ続けるクズ、真司の息子の同級生の少女を惨殺した下手人は精神に変調を来たしており、その母親は権利意識の肥大した自己肯定感の塊の毒親、自分の母親を殺し金品を盗んだ下手人に面会を求め続ける女子高生は、実は母親に売春を強要されていたなど、物語的にはダークな展開です。
その中でも救いとなっていたのが、真司の妻美和子で、真司がムショにいた時から献身的に真司を支え続け、差入屋ということで偏見を受けても自分達の仕事に誇りを持ち黙々と依頼をこなしていく姿は、とても清らかで、作品の光の面を表しているように思えました。
あと、自分の娘に売春を強要していた母親を殺害し、奪った金品を娘に与えて逃がそうとしたヤクザ(岸谷五朗さん)の演技がなかなか光っていました。廃業を覚悟に娘を連れてヤクザに面会に来た真司にヤクザは最初凄い表情で真司を睨みつけますが、娘のメッセージを見たとたん泣き崩れ、立てないほど号泣する姿は、作品に爽やかさを添えていました。
加えて、金子真司を演じた丸山隆平さんも難しい役にも関わらずすばらしい演技で、今後の出演作もぜひ見てみたいと思います。また、少女を惨殺した下手人を演じた北村匠海さんは、今回も本当に鬼気迫る演技で不気味さ満点なんですが、面会のシーンを何度か見ていると人物への憎悪感が薄れていき、ある意味犠牲者だったのかもと思わせるところは圧巻でした。
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