(ネタバレの可能性がありますので、未鑑賞の方は充分ご注意ください。)
ある青年が地下鉄を降り、改札を抜けて「8番出口」に向かおうとするがいくら歩いても出口にたどりつけません。それどころか、通路の案内表示は「0番出口」と全く別の出口の表示が出ていて、向こうから中年男性が1人歩いて来ます。おかしいなと思い、一旦元に戻ってもう一度「8番出口」に向かいますが今度は「1番出口」の表示。また向こうからさっきと同じ中年男性が歩いてくる… これは一体何なのか、通路の出口表示の横に注意書きが3行表示されていて… といった感じのストーリーです。
この作品、登場人物に名前がありません。「迷う男」「歩く男」「少年」と女子高生、「迷う男」の彼女の5名が主要キャストです。主人公「迷う男」は何となくだらしない感じで、彼女が妊娠してしまい父親になる覚悟があるか電話で主人公に執拗に迫ります。主人公はどうするか決めかねている様子でだらだらと返事を後回しにしているうちに地下鉄が駅に到着し、8番出口に向かうという前置きがあります。
あとで解説を聞いて知ったのですが、キャスト達がいる地下鉄の通路は実は「煉獄」であってその行いによって天国に行けるか地獄に落ちるかが決まるとのことで、「迷う男」「歩く男」「少年」の3人は各自の行動を試されていたのです。主人公と反対方向から歩いてくる「歩く男」も主人公と同じように8番出口を探しており、途中で「少年」とともに8番出口を目指しますが、目的地に着いた途端に少年を置き去りにして一人で出口へ上がっていってしまいます。結局、「歩く男」は救済されず8番出口を探し続ける無限ループに陥ります。
主人公は「少年」とともに8番出口を目指しますが、後にこの「少年」は彼女が身ごもっている自分の子供の化身であることを知り様々な困難から「少年」を救います。結果、「少年」は8番出口から外へ出ることに成功し、すぐに主人公も同様に8番出口へたどり着きます。その後、もう一度駅へ戻り地下鉄へ乗車するとこの作品の最初のシーンである、車内で若い男が泣き叫ぶ赤ちゃんを抱いている母親にキレて怒鳴り散らしている画面にループしてしまいます。作品の冒頭では見て見ぬふりをした主人公は、ある決意を胸に怒鳴り男の方を向くところで作品は終了します。
全体的に考察するに、この作品は謎解き不思議映画の体裁を取りつつある青年の精神的成長を描いたものではないかと思います。冒頭のどことなくだらしない雰囲気を醸し出していた主人公の二宮和也さんが、8番出口を探す過程でだんだんと自信を付けていき、最後に怒鳴り男と対決しようと決意する表情を示すまでに成長していく姿をしっかり演じていたのがとても素晴らしかったです。欲を言うなら、作品の中の細かいシーンの説明や登場人物の前風景などがもっとはっきりしているとより作品の理解がしやすくなると思います。
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