(ネタバレの要素がありますので、未鑑賞の方は充分ご注意ください)
我が子を虐待されたとして担任の教師を陥れる異様な両親、問題に真摯に向き合おうとせずに自己の保身に走り、部下の教師を見捨てる教頭・校長、儲けと世の中の関心を買うために事件を煽り自己の安っぽい正義を満足させようとするマスコミ、さまざまなクズがよってたかって一人の善良な人間を食い物にし平凡な日常を破壊していくさまは本当に恐ろしいです。
子供の母親の証言と担任の教師の証言を交互に映していくのですが、二人の証言は180°異なっておりストーリーが進行していくと母親の「でっちあげ」が徐々に明らかになっていく形になっています。少々残念だったのは、なぜこの母親がここまでの「でっちあげ」をしたのか、動機を明確に描いていなかった点です。子供の発達障害、自己の恵まれていなかった幼少期などが描かれてはいますが、どれも動機というには弱い気がします。
主人公の教師薮下誠一を演じた綾野剛さんの次第に追い詰められていく様子は、見ていてこちらが辛くなるほど真に迫っており、誠一の妻を演じた木村文乃さんのずっと誠一を支え続けようとする優しくて力強い表情はとても美しかったです。加えて、子供の母親役の柴咲コウさんの子供を見守る優しい表情と法廷ででっちあげ証言をし続ける時の狂気の入った表情の落差は、この女優さんでしかできない演技だと思いました。
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